番外!「どうする」爺の弱音。
〈大井戸の成形に難儀をしています〉

|
「謎解き」には直接関わらないかもしれません。上の写真をご覧ください。右が焼き上がった大井戸茶碗です。直径155ミリあります。左は乾燥生素地の大井戸です。焼けば右の茶碗と同サイズになるはずです。この縮み具合は爺にとって大難関です。乾燥してこの大きさですから、ロクロ引き直後は、これより一回り大きいのです。それに加えて素地の各部が平均的に焼き縮みするわけではありません。もう何年もこの素地とつき合っているのに、どんな形にロクロ引きをしたら求める大井戸の形になるのか想像できないでいます。 |
|
多分に爺の性格が影響していると家人は言います。きっちり計測したり、計画することが苦手です。これまでも、遠回りして身につけてきた技術です。爺としては「アバウトな作業だからこそ焼物業を続けてこれた」と言い訳しています。しかし爺井戸の胎土・カオリンの収縮率は半端ではありません。2割以上縮んでいます。通常、焼物に適した粘土の収縮率は15パーセントくらいです。収縮20パーセントともなれば、当然、乾燥切れもおこします。端から粘りの少ないカオリンなのに、乾燥切れ対策もせねばなりません。可塑性はますます低くなる一方で、バカでかい「どんぶり」を手数少なく引き上げねばなりません。 |

|
ね、本当に生素地でしょう。素地にカオリンを使うと、少しの衝撃でもピーと割れます。部分的に割れたりしません。強めにつまめばご覧の通りです。 |
|
ロクロ引きした大井戸素地を選ぶとなると(それも不承不承のものを加えても)焼成に回せるものは三分の一です。焼成後、どうにか形になっているものは、その三分の一ほどです。そして釉調やカイラギの良いものを選ぶといったら、正直一碗か二碗です。 |
|
古作の井戸陶工がいかにしてロクロ引きをしていたか、わかりません。が、伝世のものに一碗として同じ形の大井戸が無いのは、もしかすると素材の性質に昔の陶工も悩んだかも知れませんね。しかし今に残る名碗の表現しようのない絶妙のフォルム。さあ「どうする」。思わず弱音を吐く爺の日々です。8年前頸椎椎間板ヘルニアを患った爺は、愛用の手回しロクロを、市内で「土夢土夢窯」を運営する甥に譲りました。体に負担の少ない電動蹴りロクロに替えて井戸挑戦を続けてきました。このロクロは回転を加えたら、あとは惰性で回ってくれます。こうしたロクロでないと爺は水引きできません。常にトルクが効いている電動ロクロは爺には苦手です。惰性で回ってくれるロクロのほうが伝統的焼物作りには合っていると思い込んでいます。しかしながら、昔のロクロは現代ロクロのように精密に回ったのでしょうか。そんなことを甥に話したら、翌日、かっての爺愛用の手回しロクロが届いてしまいました。えぇ「どうする」。甥の前では弱音を呑み込んだ爺でした。 |
|
朝鮮半島では古来から蹴りロクロを使用していたと聞いています。しかし日本のそれと同じ形なのかは知りません。そして、昔の蹴りロクロは右足で蹴るので左回転だそうです。しかし、(右効きの人には)これだと徳利などの袋物には不向きなので、現代では右足でたぐって右回転にしていると聞いたことがあります。蹴りロクロで作業している産地の方、真偽のほどを教えてくださいな。爺は蹴りロクロは使えません。最初から手回しロクロでした。手回しロクロを憶えてしまうと蹴りロクロの修得は無理なのだそうで、爺も何度かトライしましたが、あきらめが先に来ました。ちなみに爺窯スタッフの姉は蹴りロクロ派です。それも古来通り右足で蹴ります。そのかわり左手で引き上げるので、袋物でも不自由していません。本来の井戸再現には左回り蹴りロクロであるべきでしょうが、そんな訳で爺は右回りロクロ派です。 |
|
そしてまた、電力から人力に戻りそうです。節電時代にふさわしいかもしれませんが、芯のずれた手回しロクロで、あの大きな大井戸素地を成形できるか心配です。しかし、ゆらゆらロクロでないと、古作の井戸のフォルムに近づけないかも知れないと思うと再挑戦するしかありませんね。あぁ「どうする」。〈2011/6/1〉 |
|
追記;以上の理由で、ここ数ヶ月、水引き作業に浸かっています。「謎解き」の進まない理由です。目に見える作業がおぼつかないのですから、ごかんべんを。 |
当サイトの文章や画像の無断転載をお断りいたします。